大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第一小法廷 昭和34年(あ)2130号 判決

主文

本件上告を棄却する。

当審における訴訟費用は被告人田立好一、同加藤貞吉の負担とする。

理由

被告人荘加寛治、同宮部一一、同早矢仕末吉、同加藤真一の弁護人長瀬秀吉、同高橋守雄、同野宮利雄、同鈴木喜三郎の上告趣意第一点について。

所論は憲法三一条違反をいうものである。しかし、控訴裁判所が刑訴四〇〇条但書によって直ちに判決をする場合、第一審の公判に関する規定である同二九三条、刑訴規則二一一条の準用による弁論または最終陳述をなさしめるべきものでないことは、当裁判所の判例とするところである(昭和二五年(あ)第六二号、同年四月二〇日第一小法廷判決、刑集四巻四号六四八頁)。そして本件においては、原審は自ら事実の取調をし、各公訴事実につき、犯罪の成否を決する上に関係を有する証人日江井嘉外二〇余名を尋問し、またその証拠調につき被告人らに対して証拠決定や召喚状を適法に送達しており、これに立会って意見弁解を述べる機会を与えていることは記録上明白であり、また刑訴三九三条四項の弁論の機会を与えたか否かは公判調書の必要的記載事項ではなく、記録にその記載がないからといって、特に反証のない限り、この点についての弁護権の制限をした違法ありと認めることはできず、また所論のように、緊急避難、期待可能性に関する主張につき特にこれを制限した証跡は何ら認められない。されば、所論違憲の主張は前提を欠くものであって、採るを得ない。(なお、昭和二六年(あ)第二四三六号、同三一年七月一八日大法廷判決、刑集一〇巻七号一一四七頁参照)。

同第二点について。《省略》

よって、刑訴四〇八条、一八一条一項本文(被告人田立好一、同加藤貞吉につき)により、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 入江俊郎 裁判官 斎藤悠輔 裁判官 下飯坂潤夫 裁判官 高木常七)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例